あおぞら歯科クリニック様

地域の医療の一翼を担う「か強診」として

Dental eNoteで訪問診療の運営が劇的に変化

あおぞら歯科クリニック(千葉県船橋市)は、船橋市を拠点に本・分院合わせて5つの診療所を展開し、地域住民の生涯にわたる口機能の維持・向上をサポートしています。毎日数百の来院患者及び在宅訪問診療機関を有する同院での、Dental eNoteによるサブカルテのデジタル化の取り組みとその効果について、同院理事長の古橋氏と、リーダーとしてデジタル化に取り組んだ田平氏・田中氏にお話を伺います。

か強診として、FAX中心の訪問診療の改革へ

理事長 古橋淳一 氏

あおぞら歯科クリニックは、厚生労働省が認定する「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」です。「か強診」は、認定数が全国の歯科医院の2割ほどにとどまる非常にハードルの高い認定制度で、診療実績はもちろん、人員配置から施設設備・衛生管理、訪問診療体制や地域医療連携まで細かい要件が設定されています。裏返すと、より良い医療のためには、基準の一つひとつが歯科医院がクリアすべき課題であると言えるでしょう。

あおぞら歯科クリニックでは、「か強診」の特徴である訪問診療を担う部門として、本院内に「訪問歯科センター」を開設しています。高齢者、認知症や精神疾患・麻痺などの持病がある方など、来院が困難な患者の診察には、全身状態に配慮する知識やノウハウを有する専任チームで、本院・分院全ての患者の訪問診療に対応しています。

Dental eNote導入前、カルテは、治療前に分院からセンターへ・診療後にセンターから分院へFAXでやり取りしていました。現在はセンターにクリニック別のiPadを並べてあり、患者が登録されている分院のiPadを手に取るだけです。FAXのやり取りで文字が潰れて読みづらくなることもなく、直接カルテを取り出して使用できます。そのうえ、カルテを戻す作業も不要です。

「1台のiPadで本院・分院すべてのカルテが自在に見られるのが理想だと考えたが、患者がどのクリニックに属するのか、また個人情報を安全に管理するためにこの運用に落ち着いた」(理事長)と言います。歯科医院では今もFAXが情報をやり取りする手段としてメジャーな手段であることを考えると雲泥の差です。

訪問歯科センターに並ぶ院別タブレットを手に取り
訪問診療カーに乗り込み出発
慣れた環境で診療が受けられる
サブカルテをデジタル化

訪問歯科センターでの運用に劇的変化をもたらしたベースには、サブカルテのデジタル化があります。かねてより「ひとりひとりの生産性の向上」をテーマに掲げ、歯科業界におけるDX化の流れを鑑み最初に取り組んだのが、Dental eNoteで膨大なサブカルテのペーパーレス化を図ったことが大きな変化に繋がりました。

多拠点経営を進める同院が、トライアルから実運用開始まで短期間でデジタル化が実現できたのは、以下のような点が勝因だったと振り返りました。

  1. iPhoneやiPadを使い慣れて直感的にわかるデジタルネイティブ世代をリーダーに任命し、口出しをせずに任せたこと
  2. 大量のカルテのスキャン業務には、高い時給を設定して通常業務とは切り分けて、休日スタッフに協力を募ったこと
  3. Dental eNoteのトライアルが、本物のカルテをそのまま利用でき、そのまま実運用に移行できたこと

リーダーとしてDental eNote導入時に中心となり各院を牽引した田平氏・田中氏は「1日の来院患者は本院・分院合わせると数百。その数だけカルテの出し入れが発生する。受付には常に「当日分、翌日分のカルテの山」があり、受付スタッフが1日かけて「翌々日分のカルテ」の準備をしていた。忙しい時には周りのスタッフが手伝うこともあったが、今はカルテの出し入れにかかる時間がゼロになり、それぞれが自分の仕事に集中できるようになった」と言います。

また、カルテ出しが簡単になったことで「電話対応が良くなった。電話がかかるとまずカルテを探さなくてはならず、カルテが見つからない間、他の電話は話中となってしまい経営的に言うと機会損失だ。今後さらにDXを進めて受付事務を少ない人員で対応できるようにし、人的リソースを患者対応に特化していきたい」(理事長)と期待しています。

翌日の予約分のカルテを取り出して準備していた
Dental eNote導入後
「通常業務に加えてアプリの使い方などの質問に対応するのは大変だったが、日々の業務が楽になり、頑張ってよかった」(導入リーダー田平氏:右、田中氏:左)
新世代の働き方にマッチ・採用に変化も

今後、歯科業界においても採用が困難になると予想されています。単純に歯科医師数の減少もありますが、その限られた歯科医師に選ばれる歯科医院であること=時代の変化に対応し、患者に選ばれる医院であることも重要です。

「当院に見学に来た歯科医師や衛生士が、私たちがタブレットでカルテを書いているところを見て、「前に見学に行ったクリニックは紙でした。タブレットなんですね」と反応することがある。今年は例年になく早く採用が決まったのは、スマートな働き方が好印象に繋がっているのかも知れない」(理事長)

また、他院や地域との連携には、今はまだ紙の紹介状が主流ですが、データでの連携が必要になる日が必ずやってくるでしょう。

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なお、サブカルテは、シンプルな3枚組を基本テンプレートとして使用しています。ドクターに関しては、それまでと変わらないことを優先し、真っ白いテンプレートに手書きします。「ドクター陣は世代的に保守的で、何かやろうとしてもだいたい反対するもの。今回反対がなかったのは手書きで使える点が大きかったからだ。Dental eNoteはこれまでと変わらず手書きで記入できる点が抵抗なく受け入れられた要因だろう」(理事長)と分析しています。

今後の展開に期待

理事長は、「Dental eNoteの導入により、スタッフひとりひとりの生産性は上がっていると感じている。いいスタートが切れて、現在は技工物に関するやり取りをするツールで、現場からさらに紙のやり取りを減らし始めている。ビジネスチャットツールを含め、複数のアプリを使って仕事が進められるようになってきた。新しいことに挑戦する土台として、スタートで失敗しなかったことは大きかった。来年以降、売上や人件費率などの数字に現れてくることに期待している」と言います。

今、歯科医院はむし歯治療から、口腔機能の維持管理へのシフトが進んでおり、歯科医院介護施設等様々な機関との連携が重要な役割になっていくと言われています。歯科医に求められるスキルや役割、働き方は、既存のスタイルとは全く異なるものに変化していく可能性があります。それぞれの機関が専門の業務に集中し、スムーズに連携するためには、データが紙を介さずデータのまま利用できるようにすること(DX化)が重要になるでしょう。

これからデジタル化に取り組む医院に対して、理事長は「私の感覚では、歯科医院でDXが進んでいるのは全体の1割程度と感じている。多くは、DXの波に遅れまいと、周囲の情報を探っている状況だろう。DX化には大きく2つの課題がある。ひとつはスタート時にかかるiPadやスキャナといった機材の費用、そしてシステム導入時の作業の大変さだ。特に開業から20-30年の患者数が多いクリニックにとっては大変な作業になるだろう。私は若い者に任せることができたので『入れた方がいい』と言い切れるが、任せられる人がいるかどうかは大きい。しかし、当院で中心になってリードしてくれた二人も特別ITに強いわけではない。それでも実現できた。それはDental eNoteだったからだろう。我々の医院を実際に見て “これはやらなくては” とスタートしている医院もある」とエールを送ります。

MetaMoJiは、あおぞら歯科クリニックならびに全国の歯科業界のDXを、Dental eNoteをはじめとする製品・技術で強力にサポートしてまいります。

(2023年10月取材)